COMET試験では、低リスク非浸潤性乳管癌(DCIS)患者における積極的なモニタリングの有用性を検証した。ガイドラインに準拠した治療法(手術±放射線療法)と比較して、積極的なモニタリングは非劣勢を示した。
対象は40歳以上の浸潤性病変が認められていない低から中グレード(グレード1-2)のホルモン受容体陽性、HER2陰性のDCIS患者995症例であった。484症例が積極的なモニタリングをされ、473症例がガイドラインに沿った手術と、必要に応じて、術後放射線療法を受けた。
積極的なモニタリング群は6カ月おきに同側乳房のマンモグラフィーと身体査察を受け、いかなる時点でも手術を希望することができ、浸潤が認められた場合は必ず手術が実施された。いずれの患者群においても内分泌療法の使用が認められていた。
24カ月のフォローアップの結果では、標準療法群の27名と積極的なモニタリングの19名が浸潤性同側乳癌と診断され、2年間の累積率はそれぞれ5.9%と4.2%であり、積極的なモニタリングの非劣勢が示された。また、浸潤癌が発見された症例において浸潤径やリンパ節転移、主要グレードに両群間の有意な差は認められなかった。
実際には29%の患者が無作為に割り当てられた治療群の治療方針に従わなかったため、治療方針に従った673名の分析結果(標準療法群246名、積極的なモニタリング群427名)では、標準療法群の8.7%と積極的なモニタリング群の3.1%が2年間で浸潤性乳癌を発症した。
内分泌療法の使用率は標準療法群では65.5%、積極的なモニタリング群で71.3%と、積極的なモニタリング群でやや多く使用されていた。
参加者にはまた、ベースライン時、6ヶ月、1年およびその後1年に1回、健康関連の生活の質(HRQoL)、不安症、うつ病、DCISに対する懸念、疼痛を含めた乳癌治療に関連した症状に関する臨床的に妥当性確認されたアンケートをいくつか回答してもらった。
HRQoLは2年間で大幅な違いはなく、治療群によっても差は認められなかった。不安症とDCISに対する懸念についても大幅な違いは認められなかった。うつ病に関しても大幅な違いは認められなかったが、積極的なモニタリング群と比較して、標準療法群ではやや高いスコアと経時的にスコアが上昇する確率が高いことが確認された。
治療方針に従った673名の分析結果では、積極的なモニタリング群と比較して、身体的な機能スコアは標準療法群では一時的に有意に低いスコアが認められたが、平均的に上腕の問題、胸の疼痛およびしびれなどの感覚障害を訴える患者が多かった。ただし、この訴えにおける差は2年でなくなっていた。
人種、年齢、腫瘍グレードおよび内分泌療法の使用有無によってスコアを正常化した際、身体的な機能スコアに有意な違いは認められなかった。
長期結果によっては、今後のDCISの管理方法および治療ガイドラインの推奨が変わる可能性が示唆された。
試験の限界としては、盲検試験として実施できないこと、人種的少数民族に属する女性の代表制が低いこと、40歳未満の患者が含まれていないこと、フォローアップの期間が2年と比較的短いことなどが挙げられた。
参考資料
1. Hwang, Eun-Sil, et al. "GS2-05: Early Oncologic Outcomes Following Active Monitoring or Surgery (+/- Radiation) for Low Risk DCIS: the Comparing an Operation to Monitoring, with or without Endocrine Therapy (COMET) Study (AFT-25)" Proceedings of the 2024 San Antonio Breast Cancer Symposium, 12 Dec. 2024, Texas, United States, Abstract.
2. Partridge, Ann, et al. "GS2-06: Patient Reported Outcomes Following Active Monitoring or Surgery (+/- Radiation) for Low Risk DCIS in the Comparing an Operation to Monitoring, with or without Endocrine Therapy (COMET) Study (AFT-25)" Proceedings of the 2024 San Antonio Breast Cancer Symposium, 12 Dec. 2024, Texas, United States, Abstract.
3. "COMET Trial Finds Active Monitoring Is a Viable Option for Some Patients With Low-risk DCIS." American Association for Cancer Research, 12 Dec. 2024, https://www.aacr.org/about-the-aacr/newsroom/news-releases/comet-trial-finds-active-monitoring-is-a-viable-option-for-some-patients-with-low-risk-dcis/.
4. "COMET Trial Finds Quality of Life Similar Among Patients with Low- risk DCIS Whether They Received Active Monitoring or Surgery." American Association for Cancer Research, 12 Dec. 2024, https://www.aacr.org/about-the-aacr/newsroom/news-releases/comet-trial-finds-quality-of-life-similar-among-patients-with-low-risk-dcis-whether-they-received-active-monitoring-or-surgery/.
5. Sile, Elizabeth. “SABCS 2024: BCRF-Supported COMET Trial Reports Promising Early Results on Active Monitoring for DCIS.” Breast Cancer Research Foundation, 12 Dec. 2024, https://www.bcrf.org/blog/sabcs-2024-comet-trial-dcis/.
6. 「低リスク非浸潤性乳管癌への積極的モニタリングは手術に非劣性【SABCS 2024】」. 日経メディカル, 18 Dec. 2024, https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202412/586950.html.
解説
本試験は低リスク非浸潤性乳管癌(DCIS)患者において、積極的なモニタリングの有用性を検証したものであり、ガイドラインに準拠した治療法(手術±放射線療法)と比較して、積極的なモニタリングは非劣勢を示したことが報告された。
ITT解析では標準療法群と積極的なモニタリング群における2年間の浸潤性乳癌の累積発症率はそれぞれ5.9%と4.2%であり、積極的なモニタリングの非劣勢が示された。しかし、実際は29%の患者が無作為に割り当てられた治療群の治療方針に従わなかった。治療方針に従った673名(標準療法群246名、積極的なモニタリング群427名)の分析結果では、標準療法群の8.7%と積極的なモニタリング群の3.1%が2年間で浸潤性乳癌を発症した。実際に標準治療を行なった症例は246例と登録時点よりも大幅に減少しているが、その中で8.7%の浸潤性乳管癌が発見されたということは、DCISと診断された対象症例の中に浸潤癌が含まれていた症例がある程度含まれていることを示している。
今回2年間という非常に短い観察期間において非劣性が証明されたことが報告された。また、多くの症例で内分泌療法が行われており、積極的モニタリングのみとはいえない状況も明らかになった。実際に試験治療が行われた症例群ではより浸潤癌の割合が多かったことを考慮すると、今後さらに多くの浸潤癌が発見される可能性がある。どのような症例において浸潤癌の発症を認めたのか、詳細なデータの公表が望まれる。低リスクDCISの中には積極的モニタリングのみでよい症例も多く存在すると考えられる。どのような症例に標準的治療を行うべきか、積極的モニタリングでよいのか、今後の解析結果が待たれる。