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TBCRC 056試験:BRCAあるいはPALB2変異のあるER陽性HER2陰性の乳癌患者におけるニラパリブ+ドスタルリマブの術前療法
2025年04月18日
要約

オープンラベルの無作為第2相試験であるTBCRC 056試験では、PARP阻害剤薬のニラパリブと抗PD-1抗体薬のドスタルリマブの併用を術前補助療法として投与した際の効果を判定している。この試験では、BRCAあるいはPALB2変異のあるトリプルネガティブ乳癌(TNBC、アームAとB)とホルモン受容体陽性(HR+、アームC)が含まれているが、今回はアームCに関する結果が発表された。

アームCではBRCAあるいはPALB2変異を有した腫瘍径が1.0cmを超えたERおよび/またはPR陽性(10%以上)患者が対象であった。参加者は、18週間にわたり200mgのニラパリブの1日1回経口投与と500mgのドスタルリマブの3週間に1回静注を術前補助療法として受け、ベースオープンラベルの無作為第2相試験であるTBCRC 056試験では、PARP阻害薬のニラパリブと抗PD-1抗体薬のドスタルリマブの併用を術前療法として投与した際の効果を判定している。この試験では、BRCAあるいはPALB2変異のあるトリプルネガティブ乳癌(TNBC、アームAとB)とホルモン受容体陽性(HR+、アームC)が含まれているが、今回はアームCに関する結果が発表された。

アームCではBRCAあるいはPALB2変異を有した腫瘍径が1.0cmを超えたERおよび/またはPR陽性(10%以上)患者が対象であった。参加者は、18週間にわたり200mgのニラパリブの1日1回経口投与と500mgのドスタルリマブの3週間に1回静注を術前療法として受け、ベースラインと3週目に腫瘍のコア生検が行われた。18週間後、手術または医師の決定による追加の術前化学療法を受けた。

試験には18名の患者が含まれ、全員がBRCA変異のER陽性患者であった。6名の患者が予定より早くドスタルリマブの使用を中止(1名が病勢進行、1名が同意の取り下げ、4名が許容できない有害事象を経験)し、3名がニラパリブの使用を中止(1名が病勢進行、1名が同意の取り下げ、1名が許容できない有害事象を経験)した。

最も多く見られたグレード2以上の有害事象は発疹(25.0%)、肝機能検査値上昇(18.8%)、下痢(12.5%)および高血圧(12.5%)であった。 

発表時に報告された症例は16名で、そのうち、3名が手術時にはpCR(18.8%、[90% CI: 5.3%-41.7%)を達成しており、11名(68.8%)において残像病変が認められ、2名(12.5%)が術前に追加の化学療法を投与された。

間質内の腫瘍浸潤リンパ球(sTIL)をベースラインおよび3週間目で評価できた12名の患者においては、ベースライン時の平均sTILは11.9%(範囲:1.0%-35.0%)で、3週間目では23.8%(範囲:5.0%-90.0%)であり、平均11.9%(ウィルコクソンの符号順位検定、p=0.09)上昇した。ベースラインにて高いsTILはpCRと関連付けられた。

HR陽性乳癌の術前管理におけるPD-1阻害薬の効果が報告されている中、今後もこの患者集団における化学療法ではない標的療法の開発が期待される。

 参考資料

1.       Mayer, Erica, et al. "RF3-01: TBCRC 056: A Phase II Study of Neoadjuvant Niraparib with Dostarlimab for Patients with BRCA- or PALB2-mutated Breast Cancer: Results From the ER+/HER2- Cohort" Proceedings of the 2024 San Antonio Breast Cancer Symposium, 13 Dec. 2024, Texas, United States, Abstract.

2.       Flaherty, Courtney. 2025. “Neoadjuvant Niraparib Plus Dostarlimab Data Support Development of Non-Chemo Approaches in BRCA+, ER+ Breast Cancer.” OncLive, 13 Jan. 2025, https://www.onclive.com/view/neoadjuvant-niraparib-plus-dostarlimab-data-support-development-of-non-chemo-approaches-in-brca-er-breast-cancer.

3.       Pelosci, Ariana. 2024. “Niraparib/Dostarlimab Shows Promise in BRCA+ ER+/HER2– Breast Cancer.” Cancer Network, 13 Dec. 2024, https://www.cancernetwork.com/view/niraparib-dostarlimab-shows-promise-in-brca-er-her2-breast-cancer.

4.       「BRCA変異のあるER陽性HER2陰性乳癌にニラパリブ+dostarlimabの術前療法でpCR率は16.7%【SABCS 2024】」. 日経メディカル, 17 Dec. 2024, https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202412/586947.html.

解説

BRCA1/2遺伝子に病的変異を有するER陽性HER2陰性乳癌18名において、PARP阻害薬のニラパリブと抗PD-1抗体薬のドスタルリマブを術前療法として投与した際の効果が報告された。pCR 16.7%, RCB 0/I 44.4%と高い抗腫瘍効果が得られた。また、ベースラインのsTILと抗腫瘍効果に関連が認められた。細胞障害性抗癌薬を使わずにpCRが得られることには臨床的意義があると考える。

一方、18名中6名がドスタルリマブの早期中止が必要であったこと、その要因に許容できない有害事象があったことは注意が必要である。今回の報告では、術後の治療内容、長期予後に関するデータが不足しており、現時点でこのような治療が今後標準治療となりうるのかを判断することは時期尚早である。

PD-L1, ER%,ゲノムプロファイル等のバイオマーカーに関して現在追加解析が行われているとのことであり、それらのバイオマーカーと治療効果や有害事象との関連が明らかになれば、適切な対象の絞り込みにつながると期待される。

監修
  SABCS 2024(サンアントニオ乳がんシンポジウム)12月9日〜12日 特別企画
徳永えり子先生
乳腺科部長
国立病院機構 九州がんセンター
解説
解説:
SABCS 2024(サンアントニオ乳がんシンポジウム)12月9日〜12日 特別企画
徳永えり子先生
乳腺科部長
国立病院機構 九州がんセンター